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福島公認会計士事務所
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アメリカ個人所得税
アメリカ個人所得税申告(米国居住者)における税務上の留意点
1.申告期限
毎年1月1日から12月31日までの所得について、翌年の4月15日までに申告する必要があります。6ヵ月間の延長が可能です。
※ あくまでも申告書の提出期限の延長であり、税金の納付期限の延長ではありません。延滞利息やペナルティが賦課されるのを避けるためには、納税の必要がある人は延長時に予定納税を行なう必要があります。
2.申告が必要な総所得(Gross Income)
年間総所得が標準控除(Standard Deduction)と人的控除(Exemption)の合計額以上ある人は、所得税申告書(Form 1040)を提出しなければなりません。人的控除は2018年度で廃止され、標準控除は申告資格により異なります(下記4.(1)参照)。
(1)課税所得
①給与・ボーナス(Form W-2添付)
②利子・配当金(Schedule B)←地方債の利子は非課税です
③自営業純利益(Schedule C)
④譲渡所得・キャピタルゲイン(Schedule D)
⑤賃貸純利益(Schedule E)
⑥ギャンブル・宝くじで得た獲得金(Form W-2G添付)
⑦失業保険金
⑧社会保険給付金、年金
⑨離婚手当(受取る側)←養育費・財産分与は非課税です
⑩州所得税還付金(前年度に項目別控除をした場合)←連邦所得税還付金は非課税
※ 駐在員の方が日本で受け取った給与・ボーナス・手当等も課税所得となります。
(2)非課税所得
①生命保険金
②損害賠償金
③奨学金
④相続又は贈与によって受け取った財産(遺産税・贈与税の対象となります)
3.調整総所得(AGI)前控除(Above-the-Line Deductions)
①特定の退職年金基金(Traditional IRA)への拠出金
②転職・転勤等による引越費用
③教育ローンの支払利子
④離婚手当(支払う側)←養育費・財産分与は控除できません
4.調整総所得(AGI)後控除(Under-the-Line-Deductions)
標準控除か項目別控除のいずれか有利な方(控除額が多い方)を選択できます。
(1)標準控除(Standard Deduction)(2023年度)
夫婦合算申告 寡婦(夫)申告 $27,700
夫婦個別申告 独身者申告 $13,850
特定世帯主申告 $20,800
※ 高齢者又は目の不自由な人には追加の控除額があります
(2)項目別控除(Itemized Deductions); Schedule A
①医療費(眼鏡代、歯科矯正費も可)←AGIの7.5%を超えた分が控除対象
②税金(州所得税、固定資産税など)
③支払利息(住宅ローン利息など)
④寄付金
⑤災害・盗難損失
⑥その他(税務申告書作成料など)
5.人的控除・扶養者控除(Exemptions)
2018年度で廃止されました。
6.税額控除(Tax Credits)
①外国税額控除(Foreign Tax Credit)
②子女税額控除(Child Tax Credit)
③低額所得者税額控除(Earned Income Credit)
※ 税額控除は税金そのものから引くことができますので、節税効果は大きくなります。
7.税率(Tax Rate)
申告資格及び課税所得に応じて、それぞれ10%から37%までの税率(2023年度)で累進課税されます。
8.計算式
総所得(Gross Income)-調整総所得前控除=調整総所得(AGI)
調整総所得(AGI)-調整総所得後控除-人的控除・扶養者控除(Exemptions)=課税所得(Taxable Income)
課税所得(Taxable Income)× 税率(Tax Rate)=税額(Tax)
税額(Tax)- 税額控除(Tax Credits)=確定税額(Tax liability)
確定税額(Tax liability)-源泉徴収税額(Withholding Tax)及び予定納税額(Estimated Tax)=還付金(Tax Refund)又は追加納税(Tax Due)
アメリカ所得税の申告義務者
アメリカで年間総所得が標準控除(Standard Deduction)と人的控除(Exemption)の合計額以上ある人は、確定申告(タックスリターン)をする義務があります。
金額は申告資格により異なり、2023年度ですと、例えば、独身の場合は$13,850以上、夫婦合算申告の場合は$27,700以上となります。自営業者は$400以上の純利益があれば、申告義務が発生します。
サラリーマンや駐在員はW-2(源泉徴収票)を添付して、Form 1040を提出します。
個人事業主はForm1040のSchedule C、物件の賃貸があればSchedule E、固定資産や株式などの売却があればSchedule Dを添付します。
また、アメリカの市民権や永住権を所持している人は、たとえアメリカで所得がなくても、Re-entry Permitを取得して日本に居住していても、日本の所得を含む全世界所得をアメリカで申告する義務が生じます。
これは、日米で確定申告の義務者としての判定基準が異なることに起因します。
日本は実際の居住状況に基づいて判断されますが、アメリカの場合は、市民権やグリーンカード保持者であれば海外に居住していても米国居住者扱いとなりますので、より広い概念となります。
アメリカタックスリターン(確定申告)の期限
日本の確定申告の期限は毎年3月15日ですが、アメリカのタックスリターン(確定申告)は、申告者の居住状況に応じてそれぞれ期限が異なります。
まず、居住者に関しては、連邦税の申告期限は毎年4月15日です(週末にあたる場合は月曜日)。ただ、6か月の延長が認められていますので、最終申告期限は10月15日となります。
米国外に住んでいる市民権保持者や永住権保持者は、自動的に2ヶ月延長されますので、申告期限は6月15日で、その後4か月の延長が認められ、最終期限はやはり同じく10月15日です。
また、市民権や永住権を持っていない非居住者に関しては、連邦税の期限は6月15日で、さらに6か月の延長が可能です。
なお、州税の申告期限ですが、ハワイ州の場合ですと、居住者・非居住者に関係なく、期限は毎年4月20日です(週末にあたる場合は月曜日)。そして、連邦税同様に6か月の延長が可能ですので、最終申告期限は10月20日となります。
注意しなければならないのは、ここでいう延長は申告期限の延長であって、納付期限の延長ではないということです。よって、ペナルティや延滞利息を回避するために、納税予定の人は申告期限までに概算の税金を支払っておく必要があります。
アメリカタックスリターン(確定申告)の延長手続
アメリカの確定申告の期限の延長手続きについては、本来の確定申告の期限までに、個人の場合はForm 4868(又はForm 2350)をIRSに提出する必要があります。
法人の場合は、決算から2ヵ月半以内にForm 7004をIRSに提出する必要があり、その際、必ず連邦のEIN(法人用米国連邦納税者番号)が必要となってきます。
期中での消費税申告を未だしておらず、EINを取得申請する機会がなかった場合には、延長手続きまでにEINを取得しなければなりませんので、若干の日にちの余裕が必要となってきます。
なお、前述のように、確定申告の期限の延長は、あくまでも申告の期限の延長で、納付の期限の延長ではありませんので、延滞利息・ペナルティを回避するために、本来の確定申告の期限までに、予定納税をすることをお勧めします。
当事務所では、予定納税をする必要があるかどうかにつき、税金の試算を承ることもできますので、ご相談ください。
税金の消滅時効
アメリカでは、IRSからの賦課徴収権は原則として3年(所得の25%以上の過少申告があれば6年)で消滅時効となります。日本の場合、時効は一般的に5年(脱税行為があれば7年)ですから、アメリカの方が日本より2年も短いということになります。
ただ、申告書が未提出の場合でも日本では時効が成立しますが、アメリカでは無申告や詐欺的申告の場合は、何年経過しても時効は成立しません。
非居住者用の申告(1040NR)をすべきであるところを居住者申告(1040)をし、税金を多く支払い過ぎているケースも多々見受けられますが、そのような場合でも時効にかかり、還付をあきらめなければならなくなりますので、ご注意ください。