アメリカ不動産に関する税務
アメリカ不動産投資における税務上の留意点
◇購入
■個人名義(単独、共有)か会社名義(現地法人設立、日本法人)かによってその後の申告が異なります。
■ハワイで不動産を購入すると、10/1時点の固定資産税評価額に対して所有形態に応じて、0.35%~1.29%(オアフ島)の税率で固定資産税が課税され、年2回(8月と2月)に分けて納付する必要があります。
◇賃貸
■米国連邦納税者番号及びハワイ州納税者番号を取得申請する必要があります。
■ハワイ州消費税及びホテル税
ハワイ州消費税(オアフ島:4.5%; オアフ島以外は4%)、ホテル税(10.25%)
賃貸収入(グロス)に対して課税され、期中(月次 or 四半期 or 半期)及び年間の確定申告をします。
* ホテル税は6ヶ月未満の短期賃貸の場合に課税されます。
■個人所得税又は会社法人税確定申告を行なう義務があります。
*減価償却 - 長期賃貸: 27.5年、短期賃貸: 39年の定額法により償却し、損金算入します。
※ 賃貸に関連した直接経費の他に、物件担保借入に係る支払利息等の経費が損金算入可能です。
また、米国で発生した損失を日本国内の所得と相殺することにより、グローバルな税負担軽減をなすことが可能となります。仮に米国で納税が発生する場合には、日本での申告上外国税額控除が取れます。
◇売却
■米国連邦納税者番号を取得申請する必要があります。
■ハワイ州譲渡税(0.1% ~ 1.25%)が売却価額に対して課税されます。
■米国非居住者又は外国法人に対しては、売却価額(グロス)に対して以下の税率で源泉徴収されます。
連邦源泉徴収税(FIRPTA): 15% ハワイ州源泉徴収税(HARPTA): 7.25%
※ 明らかに売却損となる場合には、事前に源泉税免除申請(連邦:Form 8288-B、ハワイ州:Form N-288B)を行なうことで、源泉徴収自体を回避することができます(税務当局から許可が下りるまでの間は、エスクローにて源泉税相当額はホールドされます)。
また、売却損とならない場合でも、源泉税早期還付申請(連邦:申請レター、ハワイ州:Form N-288C)を行なうことにより、いったん源泉徴収により納付された後にすぐ、実際の売却益(キャピタルゲイン)課税と比較した過剰納付相当分を取り戻すことができます。
■キャピタルゲイン・・・売却益(ネット)に対して以下の税率で課税されます。
(投資物件又は1年超保有された賃貸物件の売却の際は、通常税率よりも優遇された低税率で課税)
個人:連邦 0% - 23.8%、ハワイ州 7.25% 法人:ハワイ州 4% (連邦は通常税率と同じ)
■個人所得税又は会社法人税確定申告を行なう義務があります。
⇒ いったん源泉徴収された税金の還付を受けることができます。
ハワイでの事業登録(支店登記)
日本法人名義で不動産を購入して、今後賃貸事業を展開していくにあたって、まず現地で銀行口座を開設するのが一般的ですが、その際、銀行からの要求の1つとしてハワイ州での支店登記があります。
支店登記の申請にあたっては、日本の法務局に相当するDCCAという機関にForm FC-1を、日本の登記簿謄本及びその翻訳並びに翻訳の公証を添えて提出する必要があります。
登記に係る申請手数料は$51で、クレジットカード払いでのオンライン申請も可能であり、通常、2週間程度で登記完了の通知を受けます。
また、プラス$25を支払えば、3日程度のスピード登記も可能です。
当事務所では、ハワイでの事業登録手続の代行もしておりますので、ご相談ください。
米国連邦納税者番号(EIN)とハワイ州納税者番号
次に、ハワイ所有の不動産を賃貸に出す際は、米国連邦納税者番号(EIN)とハワイ州納税者番号を取得しなければなりません。この番号は、今後賃貸収入に対する消費税やホテル税の申告・納付に際して必要となってきます。
※詳しくは
「米国納税者番号(ITIN/EIN)」へ
ハワイ州の消費税・ホテル税
ハワイ所有の不動産を賃貸に出す場合、6か月以上の長期賃貸の場合は消費税の申告だけですみますが、6か月未満の短期賃貸の場合には、消費税に加えホテル税も納めなければなりません。
税率は消費税が4.5%(オアフ島)、ホテル税が10.25%(ハワイ全島)で、いずれも経費を引く前の賃貸収入に対しての申告・納付となります。
初年度は、1月~6月分を7月20日までに支払い、7月~12月分を1月20日までに支払わなければなりませんが、次年度からは、税務当局からの申告頻度変更の通知により、前年の税額に応じて四半期毎や毎月での申告・納付が要請される場合があります。
当事務所でも、ハワイで物件を賃貸に出している方の消費税やホテル税の申告代行もしておりますので、お問い合わせ下さい。
ハワイのコンドミニアムの短期賃貸の報告義務
ハワイで180日未満の短期賃貸をしているコンドミニアムの所有者とその管理者はコンドミニアムの管理組合に報告し、管理組合はHawaii Department of Taxation(ハワイ州税務局)にその情報をオンラインで報告することを義務づけるハワイ州条例No.326が2012年に制定されました。
この報告は継続的義務で、今年だけでなく来年以降も報告しなければなりません。
これは、事実上、コンドミニアムの管理組合が納税義務者を税務当局に報告するに等しいことになります。
個人名義でのアメリカ賃貸所得のタックスリターン(確定申告)
アメリカで不動産の賃貸所得があった場合、アメリカ居住者は翌年の4/15、非居住者は6/15までに所得税の確定申告をする必要があります。
消費税・ホテル税は経費を引く前の賃貸収入に対して申告・納付しなければなりませんが、所得税の確定申告に関しては、賃貸純利益に対する課税であり、賃貸収入から減価償却費や多くの賃貸経費が引けます。例えば、管理費、水道光熱費、修繕費、固定資産税、保険料などの賃貸に関連した直接経費の他に、物件担保借入に係る支払利息などの経費が損金算入可能です。
その結果、純損失になった場合、米国税務上は受動的損失制限(Passive Loss Limitation)により、原則として給与や利子・配当など他の所得との損益通算が制限されますが、損失を将来に繰り越して、後の年度で賃貸純利益又は売却時の利益との相殺が可能です。
法人名義でのアメリカ賃貸所得のタックスリターン(確定申告)
日本法人名義で米国不動産を購入しただけでは、米国での申告義務はありませんが、物件を賃貸に出したり、売却をした場合に申告義務が発生します。
申告フォームは1120-Fを使用し、これは個人で言えば非居住者用の1040NRに相当します。
なお、米国内に現地法人を設立してその法人が不動産を購入する形態とした場合には、賃貸や売却した場合に限らず申告義務が発生し、申告フォームは1120となります。
1120-Fの申告期限は、連邦上は決算日から6か月目の15日、ハワイ州上は4か月目の20日です。例えば、決算日が12月31日の場合、申告期限は連邦が6月15日、ハワイ州が4月20日となります。個人の場合同様、申告の延長はそれぞれ6か月間認められていますが、納税が発生する場合には、申告期限までに予定納税を行なう必要があります。
また、個人の場合とは異なり、申告書上のSchedule Lにおいて貸借対照表(Balance Sheet)を、Schedule M-1において会計上と税務上の利益(所得)の相違に関しての調整表を、Schedule M-2において会計上の利益剰余金(又は欠損金)の残高増減表を作成する必要があります。